洋裁について、ほとんどなにも知らないけれど、とにかく服をつくってみたい。
という欲望だけで、ミシンを購入して、1年ほど経ったころ、ロックミシンの存在を知った。
中古のロックミシンを探し始めた頃、以下の条件がすべてそろったロックミシンは、中古でさえも、価格的に手が届かないことがわかった。
4本糸2本針
自動糸調子機能あり
自動糸通し機能あり
かがり幅の調節ができる
これらの機能がすべてそろった、新品のロックミシンって、一体いくらぐらいするんだろう、と思いながら、中古で、安く、部品が頑丈で、壊れにくそうなものを、探した。
個人が売買できるサイトで、150€以下で探してみると、でてくるのは、3本糸1本針のロックミシンがほとんどだった。
あきらめかけたころ、120€で、4本糸2本針のロックミシンをみつけた。最初に想定していたすべての条件のうち、当てはまるのは4本糸2本針という条件のみ。仕方なく、他の機能はあきらめる。
年代は不明。中古ロックミシンは、糸かけが大変、糸調子の調節が大変、などの声をきいていたので、この糸かけの仕様をみたとき、それほどのショックはなかったけれど、
聞きなれない機能がついていることがわかった。
差動送り、という機能だ。
差動送りという機能については、その存在すら知らない。
そもそも差動送りとはナニがどうゆうときに調節するものなのか、この言葉自体がなんだか不思議な貞操をおびている、よくわからない。
という疑問を残したまま、
ロックミシンが手に入ったよろこびに浸って、裾をかがりまくっていた。
そしてある日、うまくいかないことが起きた。
あまりにも悲惨な、縫い目。
薄くてストレッチ性のある布を縫うと、こんなことになった。各々の糸の糸調子を変えて縫い直しても、ほとんど同じ結果になってしまう。
そこで、差動送り
という、あの得体の知れない機能を思い出すこととなった。
説明書を見ると、差動送りの調整について、書いてある。
1.差動送りレバーを1.0~0.7の間に合わせた場合
主に薄い布を縫う時に有効
2.差動送りレバーを1.0に合わせた場合
主に通常の布を縫う時に有効
3.差動送りを1.0~2.0の間に合わせた場合
主に伸縮性のある布を縫う時に有効
とにかく説明書の通りにしていれば、うまく縫えるはずなわけだが、今回わたしが縫おうとしているのは、伸縮性のある薄い布
であるため、1も3も当てはまってしまう。
そこで、差動送りをどの数値に設定したらいいのか、実験してみる。
実験で使う布は、さきほどの伸縮性のある薄い布
この布は、一方方向にしか伸縮しない。
実験では、この布を4枚小さく切って使う。
4枚のうち、2枚は上下伸縮し、2枚は左右伸縮するように、裁断した。
ロックミシンの糸調子は以下の数値で固定した。
針糸2.5
ルーパー上糸3.8
ルーパー下糸3.8
布1:布が上下に伸縮する場合で、差動送りは1に設定
布2:布が上下に伸縮する場合で 差動送りは2に設定
布3:布が左右に伸縮する場合で、差動送りを1に設定
布4:布が左右に伸縮する場合で、差動送りを2に設定
結果:一番きれいな縫い目になったのは布3
布が左右に伸縮する場合で、差動送り設定は1
薄くて伸縮性のある布は、扱いづらいことは間違いない。でも、肌着やパジャマをつくるにはいい肌触りで、伸縮するので、便宜性もある。
しかも、伸縮率がかなり高い布だ。仮に3センチの布を伸ばした場合、最大8センチまで伸びる。
こうゆう布はミシンで縫いづらい、といわれているが、実際ミシンで縫ったら、
あれ?わりに問題なく縫えた。
むしろ、ロックミシンで縫う時の方が、神経をつかったような気もする。
布というのは、以外と縫ってみないと、わからないものなのだな。
追記:実験でかがった布は4枚とも1枚布。後日、同じ布を重ねて2枚にして同じ実験をしたところ、布が左右に伸縮する場合で、差動送りを2に設定したときが、一番きれいな仕上がりになった。