ひとりぼっちの洋裁独学者は本当に思い通りの服をデザインできるのか
というテーマは
大多数の洋裁独学者が長年付き合っていくテーマのひとつである。
服をデザインすることを、本当に自分が着たい服を追求するための手段だと考えると
デザインは無限
ということもできる。
しかし、
一般的な洋裁本に書かれているのは
これとは真逆のことが多い。
服のデザインとは
すでに決められた
"有り型"から
目的やオケージョンに合わせて
パーツを
取捨選択していくこと
という定説は
確かに、効率的で、 そしてなにより、
それなりにちゃんとした服を
つくる時には
最も信頼できるプロセスだ。
このプロセスをたどれば、
デザイン画を描かずに、
まだ未熟な洋裁独学者でも
比較的スムーズに
服をデザインすることができる。
服のデザインを有り型から考えるプロセス
1.モデルを決める 雑誌やトレンドを参考に、つくりたいもののイメージを導き出す
2.全体のシルエットを決める 例:ワンピスの場合、 15種類の有り型がある
3.袖のシルエットを決める 例: 長袖と半袖を合わせて8種類の有り型がある
4.襟のシルエットを決める 例: アレンジも含めて、29種数の有り型がある
5.バリエーションを付け加える 例:ポケットやギャザーなどの部分的な装飾を加えたり、袖や裾の長さを、調整する
参考文献 Les bases de la couture Patronner les robes Harumi Maruyama2020
しかし
このプロセスが難儀を共わず有益で失敗のないデザインプロセスだとわかっていても
あるひとりぼっちの洋裁独学者は
このプロセスにはある工程が決定的に欠けている
ということに気付く
このモデルを決める段階において、
デザインは、
モデル決め
から始まるということには
異議はないのだが
この、モデル決め、の手段をもう少し解体していくと
ある大切なひとつの工程が浮かび上がってくる
それは、
ドローイングの工程
である。
一見、 モデル決めというのは、
無数にあるイメージから
自分がインスピレーションを受けたイメージを抽出していく作業
のように見えるが
この
イメージの抽出という工程は
ただ イメージを選んで並べる
だけに、 留まる。
そこには、
実際につくるという作業に移行するまでの
モチベーション
自分が本当につくれるかのレベル判断
実際に誰かが着たときのイメージ
などの
いわば服のデザインに付随してくる条件を
なかなか具体化できない
そこで、 それらを呼び起こすためのインスピレーションを刺激するのが
ドローイングという手段だ
ドローイングには
夢想しながら具体化していく
という、
一見すると相反するふたつの作業が同時進行するので
つくりたいもののモデル決め
においては
イメージを
実現可能な範囲に
近づけていく
ということが
可能になる
3×3のドローイング
そこでわたしが実践ししているのが
3×3のドローイング
という方法で
このドローイングの方法は、
まず、
すぐに始められて、時間がかからない
それから
特別難かしいことは考える必要もない
そして最後には、つくりたい服のモデルが決まる
という
非常にシンプルな
プロセスである
3×3のドローイング、実践
つくりたい服のテーマや用途、オケ-ジョンを表す3つの言葉を 並べる
例: バカンス、リラックス、オトナ
上の言葉のイメージを頭に置きながらイメージにあう3枚のイメージ(写真) を抽出する
3枚のイメージ(写真)を基に3枚のドローイングをつくる
ポイント
ドローイングは、 簡素にすばやく描く
その際に
✓ けしごむは使わない
✓ シンプルな直線だけで描く
✓ 細部よりもフォルムを意識する
などの条手を設けると、いい
3枚のドローイングを並べてそれぞれに3つのコメントを付与する
3つのコメントは、
細部の気になるデザインについて
赤でコメントする
コメントを付与した3枚のドローイングを並べて
技術、体力、モチベーションの点から実現可能なモデルだけを
ピックアップする
最後に、ピックアップしたモデルを1枚のドローイングにし、 色付けする
1枚のデザイン画の出来上がり
デザイン画ができると、
それからの展望というのが
大きくみえてくる
具体的にいうと
✓ 生地のチョイス
✓ 必要になる縫製技術の情報集め
✓ 着用者との意見交換
などである
1枚のドローイングを完成させるという行為が
こんなものをつくりたいから
こんなものだったらつくれそう
にシフトするための
パサージュであるとすると
1枚のドローイングが完成した後というのは、
こんなものがつくれそうから
こんなものをつくります
の次のステップに行けるわけで
その点で
ドローイングというのは
まさに
デザインの展開の大基盤
ということができる