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【洋裁と女たち】【スタイル画でみるファッションブランドの歴史】【LINVIN】ランバンの野望、お針子見習いから、ランバン帝国までの軌跡

黒いツバの広い帽子を被った若い女とランバン、洋裁と女たちの文字

LINVINと香水

 

ランバンLINVINは


ポール・ポワレ
ココ・シャネルなどのデザイナーと
同じ時期に活躍した

 

ジャンヌ・ランバン Jeanne Lanvin という女性が創立した
ブランドです

 

gallica.bnf.fr

 

現存する最古のファッションブランドとしては
とても大きな功績を残しているけれど

 

ココ・シャネルに比べたら

 

それほど

この女性について

 

語られることは
少ない印象。

 

ランバンといえば

 

ふたりの人物が手を差し出して
支え合っている

 

ブランドの紋章
印象的ですが

 

 

1926年、9月12日のThe Paris Time誌に掲載されている

ランバンのロゴ

左中央の

LINVINの文字とイラストに注目

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実は、ここに

 

マダム・ランバンの

 

ブランドを構築する上での

ある大事なメッセージ

 

反映されているという

 

参考資料:

gallica.bnf.fr

 

 

このブランドの紋章は
アルマン・アルベール・ラト
(Armand-Albert Rateau)
がデザインしたもので

 

当時、香水事業に乗り出すために

 

香水に印字する

自社ロゴが必要だったのが

ランバンロゴ誕生の由来。

 

マダム・ランバンは

 

大西洋の向こう側の顧客

を対象にした

香水販売を目指していたそうで

 

それには強固なブランドイメージが

必要だった

 

当時では、先駆的な

越境ビジネスウーマンともいえる

マダム・ランバン

 

 

のちに正式にランバンの紋章となる

このロゴマークは

 

いわば、
全世界への

ブランド発信を意識して

 

デザインされたともいえる

 

 

 

 

ランバンの代表的な香水
マイシンの発売が1925年。

 

1927年には香水アルページュ
発売され、

 

 

クリスマスの香水を売り出す広告

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これが、案の定

 

大西洋を越えて
大成功を収めたのだそう

 

(発売当時の香水ボトルは金メッキにアール・デコのデザイン)

 

さて、マダム・ランバンの目論んだ
ブランドイメージとは、なんだったのか

 

 

ランバンのミューズ

 

ランバンは10代の頃からお針子見習いとして
裁縫のアトリエで働き始め

 

最初は、顧客の自宅に縫製されたモデル
を届けることが仕事だったとか

 

 

当時のお針子見習いの様子

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ランバンは、のちに帽子店で裁縫の仕事につき
ここで本格的にキャリアをスタートさせます

 

初めてパリに自分の帽子店を開いたのは1889年のこと

 

ランバンの帽子は
とても評判が良かった

 

さっそく、女性向けファッション誌がこぞって
彼女の帽子を取り上げます

 

gallica.bnf.fr

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起動に乗ったランバンは

さらなるブランド拡大のために
帽子以外の新たな製品を模索しはじめます

 

そして、この新しいビジネスチャンスの中で

ランバンは、

 

独自のブランドイメージをも構築してしまう

専門分野の開拓を成し遂げます

 

 

当時ほんの小さな女の子だった
自身の娘マルグリット Marguerite
ブランドのミューズとして

 

子供向けファッションの

製造、販売に乗り出し

 

子供服に特化した分野

つくってしまったのだ

 

ランバンの手法は

ただ子供服を売るだけではなく

 

あるイメージとセットにして
子供服の販売促進も同時にやってしまう

 

という

当時にしては

結構大胆な戦略。

 

そのイメージこそが、ランバンのロゴの象徴にもなっている

母と子が手をつないだ姿なのだそう

 

この母と娘の絆というブランドメッセージ

 

母と子で着るペアルックという
ひとつの先駆的なアイデアを盛り込んでいる

 

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ただ、それだけではなく、

 

子供服とお母さん服という、親和的な関係性
のイメージによって

 

一見
間違えれば野暮ったくもなりそうなところを

 

顧客をきちんんと
高級志向に導くために

 

 

エレガントで、細見で、若々しいお母さんと
知的ではつらつとした娘

 

という

 

社会階級意識を上手く利用した

母子像を

 

体現している

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当時、
こういった

 

ランバンの洋服をエレガントに着こなす

 

イケてる母子のイラスト

 

様々な女性雑誌に掲載されていたことが

資料からもわかる

 

また

年中催されるイベントや

祝祭に合わせて

 

ペアルックの趣も変わるため

 

ランバンは

オケーションに合わせた

スタイルを

次々に生み出している

 

LINVIN母子パジャマペアルック

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LINVIN母子海水浴ペアルック

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LINVIN母子クリスマスペアルック

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LINVIN母子パリのお出かけペアルック

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毎度

雑誌に掲載される

ランバンのイラストは

 

わかいお母さんたちを刺激し、

 

当時、決して安くはなかった手縫いの

完璧な仕上げが施された

 

ランバンブランドの子供服が

どんどん売れたというから

 

ランバンは

女を味方につけただけでなく

子どもまでまきこんでしまった

 

といえるかもしれない

 

1946年、ランバンが亡くなり、

あのミューズであった娘が

ランバンを引き継ぎ、

 

ブランドは今に至るまで存続している

 

お針子見習いから

なんともドラマチックに

自身のブランドを築いた

 

マダム・ランバン

 

死後、10億円の巨万の富を残したといわれる

女性にして、ビジネスウーマンにして、

元お針子見習い。