刺繍に憧れて、刺繍糸を手に入れた。
刺繍したい絵柄も、決まった。
ステッチには種類がたくさんあることがわかってから、
見よう見まねで、バックステッチ、ロングアンドショートステッチ、アウトラインステッチ、サテンステッチ、チェーンステッチを入りまぜた、小さな刺繍に挑戦してみた。
初心者なのに、細かいパーツが多い複雑な図案を選んでしまったことが、そもそもの失敗の原因だった。
けれども。
初心者におすすめのあまりごちゃごちゃしていない図案を選んでいれば、失敗は避けられたのか?
いや、図案うんぬんのはなしではないような気がする。
それよりもひっかかることがある。
思い描いていた、憧れの刺繍時間がなんだかとても、窮屈に感じてしまったのだ。
そして、刺繍もなんだか、窮屈な仕上がりになった。そして、こんな気持ちを静めながら、針を刺しているからおかしなことになったんだろうなあと、途中刺繍を投げ出して、思ったりした。
①図案が描かれた布に、針を刺すたびに、線を飛び出してしまいたいという気持ちが湧いてきてしまう。
②バックステッチしてたのに、突然、あきてしまう。バックステッチ中断して、ロングアンドショートステッチに変えちゃえ、みたいな不真面目な気持ちが湧き上がってくる。
③スペースを埋めなければならないというなぞの使命感にかられて、自由な心で針を刺せない。
どうにかこうにか脱線したい自分を押さえて、進めていくのだけれど、やっぱり、一定時間同じステッチを繰り返していると、楽しい、というよりも、早くこのステッチ終わらないかなと思ってしまう。
完全に刺繍に向いてない性格だった。
でも。自由に刺繍したっていいじゃないか、とも思う。
パーフェクトな刺繍にはとても憧れるけれど、いわゆる刺繍本にのってるような、仕上がりが完璧という刺繍は、残念ながら、今の自分には向いてない。
どうやったらもっと自由に刺繍を楽しめるのだろう。
そう思いながら、図書館で、てがかりを探した。
刺繍を始めたい人のための、入門本みたいなのはたくさんあるけれど、刺繍を楽しみたい、模範はいらないから、刺繍が嫌いになりそうな人に向けての、新しい刺繍の側面をみせてくれるような本は、ないだろうか。
そして、とても楽しい本に出合った。
世界の刺繍作家のひとたちの作品がまとめられた本だ。きれいに刺繍をするというよりも、いかに自由に刺繍するか、いかに楽しんで刺繍するか、という大前提のことを思い起こさせてくれる作品ばかりだった。
刺繍の数をこなしていけば、技術やこつは身についていくのだろうが、わたしのような、そもそもつまらないと思うことはしたくない、というわがままな初心者の場合は、この本が、とても救いになった。
この本をみてから、もう一度、刺繍をしようと思い立った。
本の中から、特に好きな刺繍作家のタッチを参考にした。
historically-inaccurate.blogspot.com
laurasanchezfilomeno.ultra-book.com
えんぴつで主線だけおおまかに描いて、あとは、やりたいようにやることにした。
ステッチはあえてストレートステッチだけを使って、絵を描くように刺繍してみた。
できはともかく、針をさしている時間は、とても楽しかった。